私は、ずいぶん幕末から明治にかけての時代を、小説として書いてきました。ほぼおわって、・・・ というのは、そういう年齢になったということです。
・・・もう明治について書かないだろう、そういうときに あたって、自分が得た「明治国家」の像をお伝えするのは、自分の義務ではないか。たれから与えられた義務でもありませんから、ちょっと滑稽なのですが。
ついでながら、明治は、近代日本語をつくりあげた時代でもありました。たとえば、いま私が申しあげた、「義務」 あるいは「権利」。この二つのことばも、明治国家が翻訳してくれた言語遺産です。手放しでいうわけではありませんが、明治は多くの欠点をもちつつ、偉大としかいいようがない。
司馬遼太郎氏著『明治という国家』より。
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明治時代に関する小説には、吉村昭氏の 『ニコライ遭難』 、 『海の史劇』 、 『ポーツマスの旗』 や、古川薫氏の 『斜陽に立つ 乃木希典と児玉源太郎』 などもあります。大変お薦めの作品です。またRobert K. Massie 氏(佐藤俊二氏の翻訳)の 『ニコライ二世とアレクサンドラ皇后 ロシア最後の皇帝一家の悲劇』 を参考に日露戦争時を含む帝政ロシア(ロマノフ王朝)についても今後掲載を予定しております。
『背景』に『軍港佐世保』を追加しました。
『坂の上の雲』 は日露戦争の名将・名参謀である秋山信三郎好古・淳五郎真之兄弟と歌人正岡子規を軸に、新生日本を活写した司馬遼太郎氏の名作です。